WOで定められたワイン栽培地域と様々なテロワール

WOで定められたワイン栽培地域と様々なテロワール
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WOで定められたワイン栽培地域と様々なテロワール

原産地呼称制度のWO(Wine of Origin)は1973年に制定されました。WOで規定されているワイン産地は州単位から小地区まで4段階に分かれていて、ワインに表記されている生産地のブドウを100%使用することが義務付けられています。

  1. 州域 (GU:Geographical Unit ジオグラフィック・ユニット)
  2. 地域 (Region リジョン)
  3. 地区 (District ディストリクト)
  4. 小地区(Ward ウォード)

アフリカのワイン産地は、西ケープ州、北ケープ州、東ケープ州、クワズール・ナタール州、リンポポ州の5つの州ですが、多くが西ケープ州に集中しています。

南アフリカワインの地域

コースタル・リージョン(Coastal Region)地域

州都ケープタウンから100km圏内にあり、著名なワイナリーや老舗ワイナリーが集まる、まさに南アフリカワインの中心となる生産地域です。

ステレンボッシュ(Stellenbosch)地区

ワインの歴史も古く、約150軒のワイナリーが集まり、南アフリカワイン産業の中心地です。適度な降水量、水はけの良い土壌、そして様々なテロワールが存在します。ワイン生産者の憧れの地であり、まさしくワイン銘醸地です。そしてステレンボッシュには、ワイン生産に必要な教育機関や研究所があります。ステレンボッシュ大学ではワイン醸造学とワイン栽培学を学ぶことが出来、多くの有名な醸造家や栽培家を輩出しています。エルセンバーグ農業専門学校、ニートフルベイ研究所があり、世界で最も近代的な実験ワイナリーを持ち、新しい品種、クローン、台木などの優れた研究を行っています。品種的には赤のボルドー系品種(カベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、カベルネ・フラン、マルベック、プチベルド)のブレンドに優れたものがあります。もちろんヴァラエタルワイン、白ワインにも優れたワインが多く生産されています。

南アフリカワインの選び方
レインボーズ・エンド・ワイン・エステート

フランシュック(franschhoek)地区

ステレンボッシュ地区の北東、パール地区の南東に隣接しています。17世紀末、宗教迫害を受けたフランスのユグノー派の人々によって開かれたワイン産地です。「グルメの都」としても有名な街で、フレンチ・ユグノー文化を未だに残しています。歴史的にシュナン・ブランの栽培が主流でしたが、現在はシラー種やカベルネ・ソーヴィニョン種による高品質な赤ワインやキャップ・クラシック(瓶内二次発酵)による優れたスパークリングワインも造られています。

南アフリカワインの選び方
コルマン

パール(Paarl)地区

ステレンボッシュ地区の北、ウェリントン地区の南に隣接しています。花崗岩の大きな岩があり、その形と色からパール山(真珠山)と名付けられ地名の由来となっています。歴史的にはKWVの本社があることで有名です。比較的暖かく乾燥するため、多くは灌漑が必要ですが、山の東側の斜面は保水性が良く、それほど頻繁に灌漑する必要がありません。カベルネ・ソーヴィニョン、ピノタージュ、シラーズなど赤ワイン用ブドウ品種と、シャルドネ、シュナン・ブランなどの栽培に向いています。

南アフリカワインの選び方
マン・ファミリー・ヴィンヤーズ

ウェリントン(Wellington)地区

パール地区の北、スワートランド地区の東、タルバック地区の南に隣接する地区です。最近いくつかのワイナリーが高品質なワインを生産し、注目を集めています。ワイナリーは、スワートランド側、その他はヘイウークワ山脈に沿って点在していいます。複雑な地形のためメソ気候(狭い地域での異なる気候)が見られ独自性が生まれます。内陸にあるため、昼夜の寒暖差が大きく、ブドウへのストレスが良い結果をもたらします。また南アフリカのブドウの苗木の85%を供給している地区としても知られています。

南アフリカワインの選び方
ウェリントン・ワインズ

タルバック(Turbagh)地区

スワートランド地区の東、ウェリントン地区の北に隣接しています。三方を山に囲まれた盆地で、ブドウ以外の果物や小麦の生産地でもあります。昼夜の寒暖差が大きく、山々の起伏が複雑で、標高、斜面の傾きによって複雑で多様なメソ気候(狭い地域での異なる気候)が独自性を生んでいます。シラーズやキャプ・クラシック(瓶内2次発酵の)スパークリングワインなどに優れたものが多く見られます。近年、ピノタージュとシュナン・ブランにおいても優秀な生産者が現れています。

南アフリカワインの選び方
ライクス

スワートランド(Swartland)地区

南のマルムスベリーから北のピケットバーグに広がる広大な地区です。ブドウ栽培においては、かつてはブッシュヴァイン(株仕立て)でしたが、最近では品質管理の点で垣根式も増えています。この地域らしい高品質なワインを造る目的で、Swartland Independent Producers(SIP)が組織され、特に若手の醸造家達が、ビオディナミを含めた自然農法で優れたワインを生産し、今最も注目を集めているワイン産地となっています。かつてはフルボディの赤ワイン、高品質なフォーティファイド(酒精強化)ワインの生産が中心でしたが、高品質な白ワインやナチュラルで繊細な赤ワインも造られています。品種的には、ピノタージュ、シラーズ、カベルネ・ソーヴィニョン、シャルドネ、シュナン・ブラン、ソーヴィニョン・ブランなどの品種が増加傾向にあります。またローヌ系の赤白品種も積極的に取り入れられています。

南アフリカワインの選び方
バデンホースト・ファミリー・ワインズ
 

ダーリン(Darling)地区

広大なスワートランド地区の南部に囲まれるように位置しています。ケープタウンから車で一時間程の距離にあり、冷涼な大西洋に近く、優秀なソーヴィニョン・ブランが生産されています。その他、豊かな香りのカベルネ・ソーヴィニョン、メルロ、シラーズなどの生産が増えています。

南アフリカワインの選び方
オーモンド

タイガーバーグ(Tygerberg)地区

ケープタウンのすぐ北に位置します。ダーバンヴィル小地区は様々な土壌や斜面、冷涼な海風、夜の霧などのお陰で、高品質なブドウが生産されています。品種では、特にソーヴィニョン・ブラン、シャルドネ、メルロ、カベルネ・ソーヴィニョンに良いものが見られます。フィラデルフィア小地区はダーバンヴィルの北に位置し、昼夜の寒暖差が大きく、ブドウの生育がゆっくり進むため、カベルネ・ソーヴィニョンとメルロから造られるボルドーブレンドに高い評価を受けています。

南アフリカワインの選び方
ダーバンヴィルズ・ワイン・ヴァレー

ケープペニンシュラ(Cape Peninsula)地区

ケープ半島全域を含む地区です。海に近くて冷涼な気候が特徴で特にソーヴィニョン・ブラン、セミヨンなどに優れています。小地区にはコンスタンシアとホート・ベイがあります。

南アフリカワインの選び方
ケープ・ポイント・ヴィンヤーズ

コンスタンシア(Constantia)小地区

テーブルマウンテンの南側の斜面で、南アフリカのワイン発祥の地として知られています。年間1000mmの十分な降水量があり、灌漑の必要はありません。また、冷涼な海風の影響で、暑い2月でも平均気温が20.6度までに抑えられます。優秀なソーヴィニョン・ブランが生産されます。また世界的に有名なデザートワインも伝統的に造られています。

南アフリカワインの選び方
クライン・コンスタンシア

ケープ・サウス・コースト(Cape South Coast)地域

西ケープ州の最南端に広がる地域で、その冷涼な気候から、近年優秀なワインが多く産出され、世界のワインファンが注目しています。

エルギン(Elgin)地区

リンゴの産地としても有名なこの地区は、南アフリカでは最も冷涼なワイン生産地です。年間降水量は1000mmで灌漑の必要はありません。品種では、シャルドネ、リースリング、ソーヴィニョン・ブランの白ワインに特に優れたものが多く、数々のコンクールで受賞し、ワインジャーナリストも高い評価を与えています。最近は赤のピノ・ノワールに大きな期待がもたれます。そしてシラーも繊細なスタイルで仕上げられています。

南アフリカワインの選び方
ポール・クルーヴァー

ウォーカーベイ(Walker Bay)地区

ホエールウォッチングで有名なヘルマナスの海辺の街を取り囲む地区です。冷たい海風による冷涼な気候が特徴です。特にヘメル・アン・アードは3つの小地区(ヘメル・アン・アード・リッジ、ヘメル・アン・アード・ヴァレー、アッパーヘメル・アン・アード・ヴァレー)があり、品質の高いピノ・ノワールやシャルドネで知られています。その品質は充分世界でも通用すると評価されています。ソーヴィニョン・ブラン、ピノタージュの他、ローヌ系の品種も栽培されています。

南アフリカワインの選び方
ニュートン・ジョンソン

オーヴァーバーグ(Overberg)地区

エルギン地区とウォーカーベイ地区を取り囲むように広がる広大な地区です。新しいぶどう栽培地域で、スタンフォードの近くのクレイン・リヴァー小地区では授賞ワインも多く産出しています。シャルドネとピノ・ノワールに注目します。

スローワイン

ブレード・リヴァー・ヴァレー(Breede River Valley)地域

内陸で非常に乾燥し、昼夜の寒暖差が大きい地域で、病害虫の被害も少なく、ブドウ生産量は非常に多く、特にロバートソン地区が有名なワイン産地です。

ロバートソン(Robertson)地区

ワイン生産量が非常に多く低価格帯からプレミアムワインまで様々なワインが造られています。国内3位の規模を誇るロバートソン・ワイナリーが有名です。石灰質土壌がこの地区の特徴で、降水量は少なく、夏は気温が高くなりますが、湿気を含んだ冷涼な南東の風がこの盆地を冷やしてくれます。白ワインの産地として知られ、特にシャルドネは以前より評価は高く、最近はソーヴィニョン・ブランも評価を上げています。シラーズ、カベルネ・ソーヴィニョンで優秀なものを生産する他、キャップ・クラシック(瓶内二次発酵)による優れたスパークリングワインも造られています。

ロバートソン・ワイナリー

ウスター(Worcester)地区

ブドウの栽培面積(南アフリカ全体の20%)、生産量(27%)ともに南アフリカ最大の地区です。ブランデーの主要生産地でもあるため、多くはブランデー用のコロンバールです。KWVのブランデーセラーがあります。

ウスター地区の景観

オリファンツ・リバー(Orifants River)地域

内オリファンツ川に沿って南北に広がる広大なエリアです。比較的暖かく乾燥しています。リーズナブルで高品質なワインが多く産出されています。近年大西洋側のバンボス・ベイ小地区では、優秀なソーヴィニョンブランが造られています。標高が高く冷涼なセダバーグ地区でも優秀なワインが生産されています。シトラダル・マウンテン地区のピケナースクルーフ小地区も注目すべき産地です。

ステラ・オーガニック・ワイナリー

クレイン・カルー(Klein Karoo)地域

東西に長く伸びる内陸の産地です。マスカット品種が栽培され、甘口ワインが多く生産されていますが、最近ではカジュアルに飲めるメルロの生産も増えています。カリッツドープ地区はでは、ポートタイプのワインが有名で、ティンタバロッカ、トゥリガナショナルなどのポルトガルの品種も栽培されています。近年では、ポートワイン用のブドウから優秀な赤のスティルワインも造られています。また、この地区では世界的に評価の高いブランデーも生産されています。

カリッツドープ地区の畑
  1. ブドウ栽培に最適なテロワール(気候・土壌・地形)
  2. ワインに対する情熱と急速なワイン産業の発展
  3. 環境に調和したワイン生産と人に優しいワイン造り
  4. 世界で評価されるワインの品質
  5. 様々な品種から造られるバラエティに富んだワイン
  6. WOで定められたワイン栽培地域と様々なテロワール
  7. 350年以上もの長いワイン造りの歴史

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